これまで、ミュージカル科の
・卒業試験内容
・主科の試験準備
・副科の試験準備
・通し稽古と試験当日
の体験談をご紹介してきました。
今回はその締めくくりとなる、『ディプロム・ショー』についての体験談です。
ウィーン・ミュージカル留学については以下にまとめています⇩
ミュージカル留学の穴場 オーストリア・ウィーン!【体験談】
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ミュージカル科卒業イベント『ディプロム・ショー』
『ディプロム・ショー』は、ミュージカル科卒業の締めくくりとなる発表会です。
私の学校の卒業試験は一般公開されていませんでした。
そのため、試験のために約1年かけて準備したプログラムを家族、友人、先輩、後輩などにお披露目することができません。
そこで慣例的に、各卒業生が自主企画で準備し行うのが『ディプロム・ショー』です。
卒業試験では準備したものの一部をパフォーマンスするため、準備してきたにも関わらず演奏できなかったナンバーも出てきます。
この『ディプロム・ショー』では、準備してきたナンバーを全てプログラムに詰め込み、ミュージカル科で学んだ集大成を発表できる場になります。
そのため試験同様、試験パートナーと共に卒業生が2人1組で『ディプロム・ショー』を企画・運営することが多いです。
私も、オランダ人の試験パートナー、ラシェルと共に、この『ディプロム・ショー』を行いました。
学校の協力はもちろん得られますが、学校行事ではないので、運営にかかる費用は自分たちで賄う必要があります。
会場や日程決めから当日の運営までの全てを、試験パートナーと2人で準備していきます。
小さなコンサートとはいえ、外国で全てを自分で企画することは初めての体験であり、準備しなければならないことがたくさんあります。
以下、企画・準備から『ディプロム・ショー』終演までの体験談です。
ディプロム・ショーの企画・準備
企画
2人の卒業試験曲全てを盛り込んだコンサートです。
2時間ほどのプログラムになりました。
会場決め
私もパートナーもオーストリアには家族や地元の友達がいませんが、学校の関係者や学校外の友人、自国から来てくれる家族などでおおよその客数を予測して、会場の大きさを考えました。
そして客席数が100席ほどの会場を探すことにしました。
各卒業生たちは学校内のステージやウィーン市内、市外の小劇場など、様々な場所で『ディプロム・ショー』を行っていました。
私たちは、費用が外部の劇場に比べて安く済む学校内の劇場を借りることにしました。
日程決め
劇場の空き状況、助演メンバー、そして伴奏ピアニストのスケジュールを考慮して日程を決めました。
プログラム作成
プログラム決定
コンサートの流れ、盛り上がり、2人の着替えなどを考慮しながら、ブログラム順を決めました。
司会者を頼む
ミュージカルのあらすじや作品の説明を曲間に入れて進行のスムーズにするため、後輩に司会者をお願いしました。
早替えの時間の繋ぎのために、少し話を入れてもらったり、一緒にショーを盛り上げてくれる大切な存在です。
進行台本作成
ここでこの解説をする、こんなエピソードを話す、などの流れを決めて、台本を作りました。
当日配布用プログラム作成・印刷
当日お客さんに配布するプログラムをこんな感じに作って印刷しました。
チラシ・招待状作成
同様に、チラシ・招待状も作りました。
チラシは校内に貼って宣伝に使い、先生方や友人には招待状を配りました。
照明・音響依頼
劇場の照明や音響はプロにお願いする必要がありました。
学校と先生から紹介してもらった技術士の方にお願いしました。
写真・映像撮影依頼
ここでの舞台写真や映像は、今後オーディションの際のデモや履歴書、HP作成などの際に役立ちます。
写真用のカメラマンと、映像録画のスタッフをセミプロの方にお願いしました。
ホワイエ準備
学校内の劇場なので、ホワイエの設備はありますが、スタッフやドリンクは自分たちで準備しなければなりません。
またホワイエでのドリンク販売で、公演費用を補填します。
ホワイエ助っ人依頼
開演前、休憩中にドリンクを販売してくれるスタッフを後輩にお願いしました。
販売用ドリンク準備
事前に近くにスーパーで大量のドリンク(水、炭酸水、ワイン、シャンパン、ジュースなど)を購入して、ホワイエのドリンクカウンターに用意しておきます。
ホワイエテーブル用お茶菓子用意
立食パーティー用のテーブルを用意し、サービスのお茶菓子を用意しました。
会場の雰囲気作りです😊
寄付金箱設置
卒業発表会なので、ショーの入場料は無料です。
運営費用を補填するために、募金箱を設置しておきます。
終演後、多くのお客さんのご協力で、多くの寄付金が集まりました。
ディプロム・ショー当日
パフォーマンスする演目は、これまでに時間をかけて準備してきたものなので、大きな不安はありませんでした。
会場設営や各スタッフとの打ち合わせ、当日のリハーサルを自分たちで仕切って進めていくことが、私にとっては大変な作業でした。
会場設営
客席
客席数の調整をして、招待者の予約席を作ったり、座席にプログラムを置いてお客さんを迎える準備をしました。
ホワイエ
テーブルのセッティング、サービスのお茶菓子の準備をしました。
ドリンクカウンター内の準備は後輩の助っ人がすべて引き受けてくれました。
楽屋
試験の際と同様に、衣装のセッティング、転換表の準備をしました。
ステージ
ピアノ
舞台が広くないので、演出との兼ね合いで、ピアノのセッティング位置を調整しました。
マイク
費用の関係でワイアレスマイクが使えなかったため、ステージ上に補助的にスタンドマイクを数本立てることで、音響を整えました。
そのために、舞台上の歌う場所、踊る場所を調整する必要があり、本番がスタートするまでで、すでに頭もパンパン状態でした😅
大道具・小道具
試験の際と同様に、舞台袖、楽屋に準備しておきます。
サウンドチェック
音源を使うものの音量や、ピアノのマイク位置、音量などを技術士さんとチェックしていきます。
場当たり / リハーサル
各ナンバーの動線を確認していきます。
試験で利用してきたステージと舞台の広さが異なるため、特に踊りの位置調整のしっかり行いました。
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ディプロム・ショー本番
いよいよ、1年に渡って練習を重ねてきたナンバーをたくさんのお客さんの前で披露するときが来ました。
リハーサルまでは、あれこれ考えて頭がパンパンでした。
しかし、いざショーが始まると試験の時と同様に、歌って着替えて歌って着替えて踊っての応酬で、アッと言う間に過ぎていきました😅
途中、衣装チェンジを忘れて違う衣装のまま袖に待機してしまいました😱
だいぶ焦りましたが、大事には至らず終えることができました。
日本からは母が、そして学校内外の友人、知人、語学学校の先生方がショーに足を運んでくれました。
学校の先輩、後輩、先生など、多くの方で会場が満席のなか、2年間の集大成を発揮することができました。
卒業証書授与
全プログラム終了後、舞台上で先生からディプロム(卒業証書)を頂きました。
在学していた2年間、私はミュージカル科で唯一のアジア人であり、日本人初の卒業生になりました。
入学当初はよく、在学生から物珍しげに見られていました。
ウィーンには日本人も少なくなく、アジアからの音楽留学生も多いので、そのようなことに遭遇することはあまりありません。
ただ、ミュージカル科では珍しいかったようです。
差別的だった、ということではありません。
それでも当時心細かった私は、勝手にいじめられっ子にでもなったような気分になって、居心地のよい空間ではありませんでした。
それから徐々に打ち解けていって、多くの仲間や先生方の助けによって、この『ディプロム・ショー』を作り上げることができました。
語学が目的の留学でない以上、語学が備わった上で留学できるのが理想だと思います。
もっとドイツ語力をつけてからミュージカル留学していたら、より深く多くを学ぶことができたかな、とも思います。
学校の入学条件や卒業後のオーディションを考えて、私は同時進行で勉強する選択をしました。
これがベストな選択だったかはわかりません。
それでも、出来ないことがたくさんあったからこそ、食らいついて、必死に頑張れた自分がいたことも事実です。
物事には必ず裏と表があるように、”出来ないこと” にも裏と表があると思います。
私にとってはこの “出来ないこと” が、色んな知恵と、大きなモチベーション、そしていくつもの最高に幸せな瞬間を生み出す種になりました。
こんな私の体験談が、今不安を抱えている方を、ほんの少しでも元気付けられますように。
※私が卒業したウィーン音楽院(VIenna Konservatorium)ミュージカル科は、2016年よりAMP(International academy of music and performing arts Vienna)ミュージカル科となりました。授業カリキュラムが変更になっている部分もありますので、最新の詳細情報は問い合わせが必要です。
ウィーンのミュージカルが学べる学校については、こちらの記事にまとめています⇩
留学準備について⇩
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