ミュージカル科の卒業試験、具体的に何をするのでしょうか?
“日本の大学を卒業するのに比べて外国の大学は卒業するのが難しい” なんて聞きますが、ミュージカル科はどうなのでしょうか。
現地の学生たちよりも言語のハンデがある分、準備にも時間がかかります。
早めに具体的な到達目標をもって、勉強を進めていくことは、とても需要です。
ここではウィーンにミュージカル留学し、ウィーン音楽院※ ミュージカル科を卒業した私が、卒業試験の内容や流れについて解説します。
ウィーン・ミュージカル留学については以下にまとめています⇩
ミュージカル留学の穴場 オーストリア・ウィーン!【体験談】
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ミュージカル科の卒業試験(ディプロム試験)科目
実技試験
・ミュージカル2本(主役)
・ミュージカル1本(脇役)
・オペレッタ1曲
・ジャズスタンダード1曲
・演技 モノローグまたはディアローク2本
・ダンス2作品
口頭試験
・ミュージカル史
提出物
・ディプロムファイル
実技試験
ミュージカル2本(主役)
自分が演じたい役(主役)を2つ選び、そのミュージカル作品の主役のナンバー全て(ソロ、デュエット、その他のアンサンブル曲)を用意します。
衣装、メイク、ステージング、お芝居、照明など含めて全て自分で準備します。
ミュージカル作品を1本通して勉強することが求められるので、曲数は関係なく、あるもの全て出来るようにしておく必要があります。
主役の歌うシーンが多い作品を選べば、何曲分も準備しなければなりません。
言語はドイツ語または英語で、最低1本はドイツ語で歌う必要があります。
試験では、当日指定されたその中の何曲かのみを歌うことになります。
小道具や衣装については、学校から借りられるものもありますが、基本的に自分で用意します。
また、アンサンブル曲のためのメンバー探しや、練習スケジュールもすべて自分で計画します。
基本的には下級生にお願いすることが多く、下級生はこの機会に、卒業試験の流れや準備の仕方を学んでいきます。
リハーサルは、ヴォーカルレッスンとミュージカル実習の授業の際に先生から指導を受けます。
アンサンブル曲の場合には、自分でお願いしたアンサンブルメンバーにも一緒に授業に参加してもらいます。
ミュージカル科の授業については以下の記事にまとめています⇩
ミュージカル科の授業ってどんなことするの?オーストリア・ウィーン留学
先生からの指導をもらうリハーサルの他、メンバーと自主稽古を行い、完成度を高めていきます。
ミュージカル1本(脇役)
自分が演じたい役(脇役)を1つ選び、そのミュージカル作品のその役のナンバーを全て用意します。
準備の流れなどは、”ミュージカル2本(主役)” と同じです。
言語は自由です。
卒業試験の主科ミュージカルについての詳細な体験談は以下の記事にまとめています⇩
オペレッタ1曲
オペレッタ作品の中からソロ1曲を用意します。
簡単な衣装、小道具、ステージングなども準備します。
シャズスタンダード1曲
ジャズスタンダードのソロ1曲を用意します。
簡単な衣装、小道具、ステージングなども準備します。
演技2作品
モノローグまたはディアローク2本用意します。
衣装、小道具、ステージングなども準備します。
言語はドイツ語です。
ダンス2作品
2分半~3分程度のダンス作品を2つ用意します。
踊りのジャンルは問われません。
バレエ、ジャズ、タップダンス、モダン、コンテンポラリー、サルサなど、幅広い中から自分の得意なものを2選びます。
振付は自分でつくるか、先輩、後輩、または先生に依頼して作ってもらいます。
先生にお願いする場合は、学校の授業とは別なので別途お金を払うことになります。
曲の編集など、音源、衣装の準備をし、複数人で踊る場合にはメンバーを探し、練習スケジュールを立てます。
口頭試験
ミュージカル史
ミュージカル史に関するDVDで自主学習し、ディレクターから口頭試験を受けます。
提出物
ディプロムファイル
・自分のプロフィール、写真
・ 各教科で師事した先生方のリスト
・ ディプロム試験の演目のリスト
・試験を受けるミュージカル作品のあらすじ
・試験のために準備したミュージカルナンバーの楽譜
・オペレッタ、ジャズスタンダードの楽譜
・演劇の台本
・ダンスの曲名、振付師などの情報
これらの内容をまとめたものを製本し、ディレクターに提出します。
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実技試験の流れ
実技試験は基本的に2人1組で行われます。
試験をスムーズに進めるためです。
1人が試験で歌っている間、もう1人が衣装替えをして次の曲の準備をする、といった感じです。
同じセメスターに卒業する学生とパートナーを組むのですが、学校が割り振ってくれるわけではないので、自分で相手を探します。
試験の1~2週間前に、各教科で師事している先生方と、試験の通しリハーサルをします。
準備している曲全てを最終確認し、試験に備えます。
この通しリハーサルでは、各ナンバーの照明の指示表を用意し、簡単な照明の操作をお願いする人も準備しておく必要があります。
また、各ナンバーの小道具や大道具のセッティング、ステージの転換もアンサンブルメンバーにお願いする必要があります。
そのために、各シーンのセッティング表も作っておきます。
合わせて、ダンス試験の際の音出しをしてくれる人もお願いしておきます。
ダンスナンバー以外の全てのピアノ伴奏は、ヴォーカルコーチの先生が勤めてくれます。
全ての楽譜を製本してまとめて渡しておきます。
ヴォーカル、演技、ダンスの順番で、パートナーと交互に試験が進んでいきます。
卒業試験は一般公開していません。
基本的に会場にいるのはミュージカル科の先生方とディレクターだけですが、場合によってはエージェント関係者が卒業生をスカウトしにくることがあります。
合格発表
全ての試験が終了すると、先生方とディレクターで会議が行われ、1時間以内ほどでディレクターから結果が報告されます。
ディプロムショー
これは試験には含まれないので任意ですが、ほどんど人がディプロム試験後にディプロムショーを行います。
ディプロム試験は公開されていないため、これだけ時間をかけて準備した試験プログラムを観客にお披露目する機会がありません。
また、試験では指定されたナンバーのみを行なうため、準備したのに本番をやらず終いだったナンバーも出てきます。
ミュージカル科で学んだ集大成を学校の仲間、家族、友人の前で披露する機会として、ディプロムショーは開かれます。
80~200人ほどの小さな劇場を借りて、プログラム、フライヤー、ポスターの作成、音響、照明、録画の手配、ホワイエの準備に至るまで、パートナーと2人で全て準備します。
めちゃくちゃ大変ではありますが、卒業の輝かしいビッグイベントです😊
ざっくりで自由な課題、でも他力本願では進まない
私は日本の音大の声楽科を卒業してからウィーンに留学したので、日本での卒業試験も経験しています。
私の大学では、卒業試験はそれまでの学期末試験と大差ない試験内容でした。
(これは専攻や大学によって異なる点もあるかと思います。)
また、卒業の4年次には学内オペラ公演があります。
これはイタリアから招かれた演出家と稽古し、立派な劇場で歌える機会でした。
仲間と演技を考えるのが、めちゃくちゃ楽しい時間でした。
しかしながら、企画や制作などはすべて大学が用意してくれて、私たちは合唱としてただそこに参加するだけでした。
これが、
「こちらの岸から、卒業というあちらの岸まで、この足こぎボードに乗って渡ってね、コースロープに沿って進めば大丈夫だよ!」
といった感じだったら、ウィーンでの卒業試験は、
「卒業証書はあっちの岸に置いといたよ、どこを渡っても自由だよ!ボードで行くなら自分で探してきてね、壊れた?じゃあ一緒に修理しようか。」
といった感じかもしれません。
ウィーンでの卒業試験では自分がエンジンになって進めていくことが必要であり、計画する力が重要です。
私の卒業試験の体験談については、また記事を書こうと思います。
あなたの留学準備に少しでも役立ちますように。
※ウィーン音楽院(VIenna Konservatorium)ミュージカル科は、2016年よりAMP(International academy of music and performing arts Vienna)ミュージカル科となりました。授業カリキュラムが変更になっている部分もありますので、最新の詳細情報は問い合わせが必要です。
ウィーンのミュージカルが学べる学校については、こちらの記事にまとめています⇩
ウィーンでミュージカルが学べる学校【ビザ情報】& ダンススタジオ11選
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入学して間もなく、卒業試験の内容や準備について聞いた時には、愕然としました。
私はすでに日本で音大を卒業していたので、2年後のミュージカル科卒業を目指していました。(通常は4年課程)
「ドイツ語もろくに出来ない。友達もいない。私とパートナーになって試験やショーの準備をしてくれる人は見つかるのだろうか?」
ましてや、一緒のタイミングで入学した学生とは卒業時期が違うのです。
「すでに在学している先輩とパートナーにならなきゃいけない…
そもそも自分の卒業試験前に、先輩の卒業試験に関わらせてもらえるのだろうか…」
とにかく焦っていました。
目先のことにいっぱいいっぱいになりながら、先行きの不安も抱えたまま、1セメスターの終わりが近づいてきました。
そんなある日、翌セメスターに卒業試験を控えたダンスのクラスメイトの1人が、”卒業試験で一緒に踊って欲しい” と声をかけてくれました。
日本で踊りをやっていた経験に救われました😭
こうして私は2セメスター目から卒業試験を経験できることになりました。